日本は植民地主義の遺産を放棄しよう! ビラ

最近、釣魚諸島(尖閣諸島)や独島(竹島)をめぐり、中国、台湾、韓国と日本とのあいだで対立が強まっていることについて、先日にこのような声明を出しました。しかしそこにも書いたように、「許すな! 憲法改悪・市民連絡会」の声明は、疑問のある論点がありました。そこで、他の団体の声明にかこつけることなく、独自の声明と解説も出すことにしました。今回はビラ仕立てにしてあります。ぜひあちこちで配ったり、駅や公共施設に置いたり、秋の夜長に友人や家族と読みあわせたりしてください。

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ビラの内容

[おもて]

植民地主義の遺産を放棄しよう!

釣魚諸島(尖閣)と独島(竹島)の所属をめぐって、中国、台湾、韓国で、日本の姿勢への抗議が高まっています。朝鮮民主主義人民共和国も日本を批判しています。かたや日本では、両島は「日本固有の領土」だと政府が言いはり、メディアは抗議デモを「理不尽」な「反日暴動」としてしか報道しません。しかしこれは「領土問題」ではなく、今日にまで尾をひく日本の植民地主義の問題です。したがって、日本人こそが政府に「侵略の遺産を放棄せよ」と要求すべきです。

「尖閣諸島」「竹島」 は日本が侵略戦争で奪った

日本が釣魚諸島(尖閣)と独島(竹島)を侵略戦争で奪ったことは、明確な事実です。
1. 釣魚諸島: 1895年、日清戦争で勝った大日本帝国(日帝)は、台湾を公式に植民地化し、朝鮮への影響力をも強める「下関条約」を、清国に結ばせました。その数ヶ月前、つまり戦争での勝ちが決まったところで、釣魚諸島の「編入」が閣議決定されました。この「編入」は諸外国に宣言せず一方的になされましたが、くわえて、その10年前(1885年)には他ならぬ日本政府が、調査の結果、釣魚諸島が清国に属すると認識していました(外務省『日本外交文書』第18巻に記録あり)。
2. 独島: 日露戦争後の講和条約(1905年)で、日帝はロシアにたいして朝鮮(大韓帝国)での権益を確保したあと、「日韓協約」によって大韓帝国を「保護国」にしました(その5年後に朝鮮を公式に植民地化します)。この「協約」の数ヶ月前、やはり日帝は独島を一方的に「編入」します。しかし独島については、そもそも近代化以前の1695年、鳥取藩は「松島」(現在の日本語名で竹島と同じ)が同藩に属さないことを明確にし、翌年には江戸幕府が「竹島」(現在の朝鮮語名で鬱陵島および独島)への渡航を禁じたという歴史的経緯があります(竹島一件)。
3. 結論: したがって、両島は日本の「固有の領土」ではなく、侵略と植民地化にもとづく「領土」なのです。それを手放さないことは、侵略の過去を戦後日本が反省していないことの表れに、ほかなりません。

反日有理! 日本人こそ「反日」すべき

日本の報道では「反日」という言葉が、なにやらネガティヴな印象づけとともに乱発されています。しかし、釣魚(尖閣)や独島(竹島)は日本の植民地主義の遺産なのですから、中、台、韓、朝の人々が怒るのは当然のことです。「周りの国が怒っているから」だけではありません。いつまでも侵略の遺産にすがりつくような政治家たちに代表されているのは、日本の民衆にとっても悪いことです。過去の侵略行為をなかったことにするような支配層が容認されるような国であるからこそ、日本の為政者たちは、貧困、原発、沖縄への基地集中など他の問題でも無責任でいられるのです。だとすれば、日本人にとって「反日」とは、そのような「日本」のありかたを拒否し、今とは別のよりよい国や社会を作ろうとする、ポジティヴな行為であるはず。

[うら]

釣魚諸島(尖閣)と独島(竹島)にかんするQ&A

Q.両島が「日本固有の領土」でなかったとしても、国際法にのっとって編入されたのでは?
A.国際法から見ても大いに問題あり。

日本の保守的な政治家や専門家は「国際法上問題ない」としています。たとえば、両島は「無主地」(まだ人間が支配していないとされる土地)であったから、先に編入を宣言した国のものになる、などと言って。たしかに、伝統的社会には近代的な測量技術にもとづいた地図がなく、国境が今日のようには明確でありませんでした。しかしそれでも、両島が清国や朝鮮に帰属することは、近代化以前の時代において確認されていました。その延長線上に、明治日本が侵略戦争によって両島を一方的に「編入」したという事実があります。そもそも、1895年の下関条約でも1905年の日韓協約でも、両島の帰属については触れられていません。つまり、日本は諸外国にたいして秘密裏に「編入」をおこなったのでした。「国際法にのっとっている」と言うなら、なぜ日本政府はこのような一方的でコソコソした手段をとったのでしょうか。

Q.いつまで日本は過去のことで謝罪やら賠償やらを要求されなければならないのか?
A.日本政府は賠償もちゃんとした謝罪もしていない。

「日本はさんざん謝ってきたのに今も中国や韓国にタカられている」というイメージは、保守的な政治家やメディアがまき散らしてきたものですが、まったく実状に沿いません。村山談話(1993年)や河野談話(1995年)が右翼からは目の敵にされていますが、これは反省のない形だけのお詫びでしかありません。それは日本国家の具体的責任も、その責任をとるための補償も、すべて誤魔化しています。賠償も実際にはしたことがなく、あるのは政府間(中日および韓日間)での「経済協力」の約束、つまり「商売で仲良くするから昔のことはチャラにしてよ」という約束だけです。それどころか、政治家や公人が「慰安婦」も「南京虐殺」もなかったなどと言いふらし、さらには政府が侵略の過去を無視して釣魚諸島や独島を「日本固有の領土」だと言いはっています。これらはすべて「過去」だけではなく「現在」の日本の問題でもあります。

Q.中国の「暴動」や軍事的緊張が高まっている。歴史はどうあれ暴力はよくないのでは?
A.これまで「暴力」=軍事力に訴えてきたのは日本。まずはその暴力をなくすべき。

日本は釣魚諸島や独島を、それこそ国ぐるみの暴力(戦争)にものを言わせて奪いました。しかも釣魚については、力づくも占有を今までずっと続けています。最初の暴力を振るったのは日本です。その最初の暴力につらなる両島の一方的な実効支配を日本がやめないかぎり、暴力によらない平和的解決へのプロセスは、いつまでも始まることはないでしょう。

Q.「領土争い」をするより、両国での共同開発や、双方の漁師の共同利用にすべきでは?
A.領土争い以前に、日本の植民地主義の問題であって、日本の両島放棄は前提とされるべき。

争いではなく共有を、対立ではなく協調を、というスローガン自体はポジティヴなものです。作成者も共感します。しかしそもそも、日本は「共有」を言い出す立場にあるでしょうか。かつて日本が釣魚諸島や独島を「編入」したのは、台湾、朝鮮半島、中国大陸にたいする日本の侵略や植民地化の一環としてです。だとすれば、これらの島への日本の領土主張(釣魚については実効支配)が1945年以降も続いているのは、おかしなことです。かつての侵略戦争や植民地支配が悪いことであったと反省するのであれば、日本が本来すべきことは両島の放棄です。それなしに、いかなる「共同開発」や「共同利用」の協議もありえません。

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